る古代復帰の夢がこんなふうにして実現される日の近づいたばかりでなく、あの本居翁が書きのこしたものにも暗示してある武家時代以前にまでこの復古を求める大勢が押し移りつつあるということは、おそらく討幕の急先鋒《きゅうせんぽう》をもって任ずる長州の志士たちですら意外とするところであろうと彼には思われた。
 中津川の友人香蔵から半蔵が借り受けた写本の中にも、このことが説いてある。それを見ると世には名も知らない隠れた人があって、みんなが言おうとしてまだ言い得ないでいることをよく言いあらわして見せてくれるような篤志家のあることがわかる。その写本の中には、こういうことが説いてある。建武の中興は上《かみ》の思《おぼ》し召しから出たことで、下々《しもじも》にある万民の心から起こったことではない。だから上の思し召しがすこし動けばたちまち武家の世となってしまった。ところが今度多くのものが期待する復古は建武中興の時代とは違って、草叢《くさむら》の中から起こって来た。そう説いてある。草叢の中が発起なのだ。それが浪士から藩士、藩士から大夫、大夫から君侯というふうに、だんだん盛大になって、自然とこんな復古の機運をよび
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