歳にもなる。この姉弟《きょうだい》の子供はまた、おまんに連れられて、隣家の伏見屋から贈られた大きな九年母《くねんぼ》と林檎《りんご》の花をそこへ持って来た。伊之助も遷宮式のあることを聞いて、霊前に供えるようにと言って、わざわざみごとな九年母などを本陣へ寄せたのだ。
 思いがけない祭りの日でも来たように子供らは大騒ぎした。おまんはかわいいさかりの年ごろになって来た孫娘が部屋から走り出て行く姿を見送りながら、
「でも、お民、早いものじゃないか。宗太の方はまだそれほどでもないが、お粂はもうおとなの話なぞに気をつけきっているよ。耳を澄まして、じっとみんなの言うことを聞いてるよ。」
「ほんとに、あの娘《こ》のいるところじゃ、うっかりしたことは話せなくなりました。」
 とお民も笑った。
 その日の式は山吹村の方で夜の丑《うし》の刻《こく》に行なわれるという。伊那の谷から中津川辺へかけてのおもな平田門人のほとんど全部、それにまだ入門しないまでも篤胤の信仰者として聞こえた熱心な人たちが古式の祭典に参列するという。半蔵は自分一人その仲間にもれたことを思い、袴《はかま》をつけたままの改まった心持ちで、山吹
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