村|追分《おいわけ》の御仮屋《おかりや》から条山神社の本殿に遷《うつ》さるるという四大人の御霊代《みたましろ》を想像し、それらをささげて行く人のだれとだれとであるべきかを想像した。
 その年は前年凶作のあとをうけ、かつは諒闇《りょうあん》のことでもあり、宿内倹約を申し合わせて、正月定例の家祈祷《いえきとう》にすら本陣では家内限りで蕎麦《そば》切りを祝ったくらいである。そんな中で遷宮式の日を迎えた半蔵は、清助と栄吉を店座敷に集めて、焼※[#「魚+昜」、274−16]《やきするめ》ぐらいを肴《さかな》に、しるしばかりの神酒《みき》を振る舞った。床の間に燈明のつくころには、伊之助も顔を見せたので、半蔵はこの隣人を相手に、互いに霊前で歌なぞをよみかわした。いつのまにか伊之助は半蔵の歌の友だちになって、年寄役としての街道の世話、家業の造酒なぞの余暇に、半蔵を感心させるほど素直な歌を作るような人である。
 夜はふけた。伊之助も帰って行った。そろそろ山吹村の方では行列が動きはじめたかとうわさの出るころには、なんとなくおごそかな思いが半蔵の胸に満ちて来た。彼はその深夜に動いて行く松明《たいまつ》の輝き
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