分には見える。稲草《いなくさ》によっては八分通りの出来にすら見える。最初よりはよほど見直したという村の百姓たちの評判もまんざらうそでないと知った時は、思わず彼もホッとした。
十四代将軍|家茂《いえもち》の薨去《こうきょ》が大坂表の方から伝えられたのは、村ではこの凶作で騒いでいる最中である。
三
馬籠の宿場の中央にある高札場《こうさつば》のところには物見高い村の人たちが集まった。何事かと足を停《と》める奥筋行きの商人もある。馬から降りて見る旅の客もある。人々は尾州藩の方から伝達された左の掲示の前に立った。
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「公方様《くぼうさま》、御不例御座遊ばされ候《そうろう》ところ、御養生かなわせられず、去る二十日|卯《う》の上刻、大坂表において薨御《こうぎょ》遊ばされ候。かねて仰せ出《い》だされ候通り、一橋中納言殿《ひとつばしちゅうなごんどの》御相続遊ばされ、去る二十日より上様《うえさま》と称し奉るべき旨《むね》、大坂表において仰せ出だされ候。」
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日ごろこもりがちに暮らしている吉左衛門まで本陣の裏二階を出て、そこへ上の伏見屋か
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