て、宿役人へ願いの筋があるととなえて、村じゅうでの惣《そう》寄り合いを開始する。果ては、大工左官までが業を休み、町内じゅうの小前のものは阿弥陀堂《あみだどう》に詰めて、上納|御年貢米《おねんぐまい》軽減の嘆願を相談するなど、人気は日に日に穏やかでなくなって行った。
 金兵衛は半蔵を見るたびに言った。
「どうも、恐ろしい世の中になって来ました。掟年貢《おきてねんぐ》の斗《はか》り立てを勘弁してもらいましょう、そんなことを言って、わたしどもへ出入りの百姓が三人もそろって談判に見えましたよ。」
 そういう隠居は木曾谷での屈指な分限者《ぶげんしゃ》と言われることのために、あの桝田屋《ますだや》と自分の家とが特に小前の者から目をつけられるのは迷惑至極だという顔つきである。米不足から普請工事も見合わせ、福島の大工にも帰ってもらい、左官その他の職人に休んでもらったからと言って、そんなことまでとやかくと言い立てられるのは、なおなお迷惑至極だという顔つきである。
「金兵衛さん、」と半蔵は言った。「あなたのようにあり余るほど築き上げたかたが、こんな時に一肌《ひとはだ》脱がないのはうそです。」
「いえ、です
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