の時になって見ると、村方一同が米の買い入れ方を頼もうにも、宿々は凶作も同様で、他所への米の出入りは少しも叶《かな》わないとなった。馬籠の宿内でもみなみなそう持ち合わせはない。日ごろ米の売買にたずさわる金兵衛方ですら、その月かぎりの家族の飯米が三俵も不足すると言ってあわて出したくらいだ。普請好きな金兵衛は本家や隠宅に工事を始めていて、諸職人の出入りも多かったからで。
こうなると、西に盆地の広くひらけた美濃方面より米を買い入れるよりほかに馬籠の宿場としてはさしあたり適当な道がない。中津川の商人、ことに万屋安兵衛《よろずややすべえ》方なぞへはそれを依頼する使者が毎日のように飛んだ。岩村に米があると聞いては、たとい高い値段を払っても、一時の急をしのがねばならない。そういう岩村米も売り上げて、十両につき三俵替えという値段だ。米一升、実に六百二十四文もした。
毎日のように半蔵は背戸田《せとだ》へ見回りに出た。時には宿役人一同と出入りの百姓を引き連れて、暴風雨《あらし》のために荒らされた田方《たかた》の内見分《ないけんぶん》に出かけた。半蔵が父の吉左衛門とも違い、金兵衛の方は上の伏見屋の隠宅にじ
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