福寺の和尚《おしょう》さま(松雲のこと)も隠宅の方へお見舞いくださいました。そのおりに、墓地での倒れ木のお話も出ましてね、かねて、村方でも相談のあった位牌堂《いはいどう》の普請《ふしん》にあの材木を使いたいがどうかと言って、内々《ないない》わたしまでその御相談でした。それは至極《しごく》よろしい御量見です、そうわたしがお答えして置きましたよ。あの和尚さまは和尚さまらしいことを言われると思いましたっけ。」
「時に、半蔵さん、飯米のことはどうしたものでしょう。」と伊之助が言い出す。
「それです、妻籠の方で融通《ゆうずう》がつくかと思いましてね、今、今、そのことを寿平次さんにも頼んで見たところです。妻籠にも米がないとすると、山口はどうでしょう。」と半蔵は答える。
「山口もだめ。」と言うのは伊之助だ。「実はきのうのことですが、人をやって見ましたよ。あの村にも馬籠へ分けるほどの米はないらしい。やっぱりお断わりですさ。使いの者はむなしく帰って来ました。」
「悪い時には悪いなあ。」
それを言って、寿平次はあたりを見回した。
間もなく、寿平次は去り、金兵衛も上の伏見屋の方へ戻《もど》って行った。そ
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