《やねがわら》を百枚ほども吹き落とされたと言って、それを告げに彼のところへ走り寄るのは隣家伏見屋の年寄役伊之助だ。田畑のことは確かにもわからないが、この大荒れでは稲穂もよほど痛んだのではないかと言って、彼のそばに来てその心配を始めるのは問屋の九郎兵衛《くろべえ》だ。周囲には、大風の吹き去ったあとの街道に立って茫然《ぼうぜん》とながめたたずむものがある。互いに見舞いを言い合うものがある。そのうちにはあちこちの見回りから引き返して来て、最も破損のはなはだしかったところは村の万福寺だと言い、観音堂《かんのんどう》の屋根はころびかかり、檜木《ひのき》六本、杉《すぎ》六本、都合十二本の大木が墓地への通路で根扱《ねこ》ぎになったと言って見せるものがある。伏見屋の控え林では比丘尼寺《びくにでら》で十二本ほどの大木が吹き折られ、青野原向こうの新田《しんでん》で二十本余の松が吹き折られ、新茶屋や大屋なぞにある付近の山林の損害はちょっと見当もつかないと告げに来るものもある。
 その日の夕方までには村方被害のあらましの報告が荒町方面からも峠方面からも半蔵のところに集まって来た。馬籠以東の宿では、妻籠《つまご
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