それぞれの屋号をしるした門口の小障子からはわずかに燈火《あかり》がもれている。ともかくも無事に半蔵が自分の家の本陣へ帰り着いたころは、そんなにおそかった。
「子供は。」
半蔵はまずそれをお民にきいた。往《い》きと違って、彼も留守宅のことばかり心配しながら帰って来たような人だ。
「あなた、あれからお父《とっ》さんもお母《っか》さんもずっとお母屋《もや》の方にお留守居でしたよ。さっきまでお父さんも起きていらしった。あなたが帰ったら起こしてくれと言って、奥へ行って休んでおいでですよ。」
とお民は言って見せた。
寛《くつろ》ぎの間《ま》に脚絆《きゃはん》を解いた半蔵は、やっぱり名古屋まで行って来てよかったことを妻に語り始めた。そこへ継母のおまんも半蔵の話を聞きに来る。この旅には名古屋まで友人の香蔵と同行したこと、美濃尾張方面の知己にもあうことができて得《う》るところの多かったこと、そんな話の出ているところへ、吉左衛門は煙草盆《たばこぼん》をさげながら奥の部屋《へや》の方から起きて来た。
「半蔵、どうだったい。いくらか京大坂の様子がわかったかい。」
半蔵が父のところへもたらした報告に
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