どうあろうか。」とまた吉左衛門が言葉を添える。「戦争の騒ぎだけでもたくさんなところへ、こないだのような大風雨《おおあらし》じゃ、まったくやり切れない。とかく騒がしいことばかりだ。半蔵も気をつけて行って来るがいいぞ。」
ちょうど隣家の年寄役伊之助も東海道の医者のもとまで養生の旅に出て帰って来ている。半蔵はこの人だけに事情を打ち明けて、留守中の宿場の世話をよく頼んで置いてある。本陣や問屋の方の手伝いには清助もあれば、栄吉というものもある。
「お母《っか》さん、お願いしますよ。」
その声を残して置いて、半蔵は佐吉と共に裏口の木戸から出た。いつも早起きの子供らですら寝床の中で、半蔵が裏の竹藪《たけやぶ》の細道のところから家を離れて行ったことも知らなかった。
二
月の末になると、半蔵は名古屋から土岐《とき》、大井を経て、二十二里ばかりの道を家の方へ引き返した。帰りには中津川で日が暮れて、あれから馬籠の村の入り口まで三里の夜道を歩いて来た。
街道も更《ふ》けて人通りもない時だ。荒町《あらまち》から馬籠の本宿につづく石屋の坂も暗い。宿場の両側に並ぶ家々の戸も閉《し》まって、
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