かまい》追放となった。
 ある日、半蔵は本陣の店座敷から西側の廊下を通って、家のものの集まっている仲の間へ行って見た。継母のおまんはお民を相手に糸などを巻きながら、日光大法会のうわさをしたり、水戸浪士のうわさをしたりしている。おまんは糸巻きを手にしている。お民は山梔色《くちなしいろ》の染め糸を両手に掛けている。おまんがすこしずつ繰るたびに、その染め糸の束《たば》はお民の両手を回って、順にほどけて行った。廂《ひさし》の深い障子の間からさし込む日光はその黄な染め糸の色を明るく見せている。
「お母《っか》さんもお聞きでしたか。」と半蔵は言った。「いよいよ耕雲斎たちの首級《くび》も江戸から水戸へ回されたそうですね。あの城下町を引き回されたそうですね。」
 おまんはお民の手にからまる染め糸をほぐしほぐし、「どうも、えらい話さ。お父《とっ》さん(吉左衛門)もそう言っていたよ、三百五十人からの死罪なんて、こんな話は今まで聞いたこともないッて。」
 その時、半蔵は江戸の方から来た聞書《ききがき》を取り出して、それを継母や妻にひろげて見せた。武田らの遺族で刑せられたものの名がそこに出ていた。武田伊賀の妻
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