も難儀な旅をいたしまして、すこしからだを悪くしたものですから、しばらく敦賀《つるが》のお寺に御厄介《ごやっかい》になってまいりました。まあ、命拾いをしたようなものでございます。」
 お民は下女に言いつけて、飯櫃《めしびつ》と膳《ぜん》とをその上がりはなへ運ばせた。
「亀山《かめやま》さんもどうなりましたろう。」
 それをお民が半蔵に言うと、降蔵は遠慮なく頂戴《ちょうだい》というふうで、そこに腰掛けたまま飯櫃を引きよせ、おりからの山の蕨《わらび》の煮つけなぞを菜にして、手盛りにした冷飯《ひやめし》をやりはじめた。半蔵は鎗《やり》をかついで浪士らの供をしたという百姓の骨太な手をながめながら、
「お前は小荷駄掛《こにだがか》りの亀山|嘉治《よしはる》のことを聞かなかったかい。あの人はわたしの旧《ふる》い友だちだが。」
「へえ、わたくしは正武隊付きで、兵糧方《ひょうろうかた》でございましたから、よくも存じませんが、重立った御仁《ごじん》で助けられたものは一人もございませんようです。ただいま申し上げましたように、わたくしは追放となりましてから患《わずら》いまして、しばらく敦賀に居残りました。先月
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