織《さるばおり》を着た村の小娘たちまでが集まって、一年の中の最も楽しい季節を迎え顔に遊び戯れている。愛らしい軽袗《かるさん》ばきの姿に、鳶口《とびぐち》を携え、坂になった往来の道を利用して、朝早くから氷|滑《すべ》りに余念もない男の子の中には、半蔵が家の宗太もいる。
一日は一日より、白さ、寒さ、深さを増す恵那山《えなさん》連峰の谿谷《けいこく》を右手に望みながら、やがて半蔵は連れと一緒に峠の上を離れた。木曾山森林保護の目的で尾州藩から見張りのために置いてある役人の駐在所は一石栃《いちこくとち》(略称、一石)にある。いわゆる白木の番所だ。番所の屋根から立ちのぼる煙も沢深いところだ。その辺は馬籠峠の裏山つづきで、やがて大きな木曾谷の入り口とも言うべき男垂山《おたるやま》の付近へと続いて行っている。この地勢のやや窮まったところに、雪崩《なだれ》をも押し流す谿流の勢いを見せて、凍った花崗石《みかげいし》の間を落ちて来ているのが蘭川《あららぎがわ》だ。木曾川の支流の一つだ。そこに妻籠《つまご》手前の橋場があり、伊那への通路がある。
蘭川の谷の昔はくわしく知るよしもない。ただしかし、尾張美濃か
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