に残して置いて行った歌がある。水戸浪士に加わって来た同門の人が飯田や馬籠での述懐だ。
[#ここから2字下げ]
あられなす矢玉の中は越えくれどすすみかねたる駒《こま》の山麓《やまもと》
ふみわくる深山紅葉《みやまもみじ》を敷島のやまとにしきと見る人もがも
八束穂《やつかほ》のしげる飯田の畔《あぜ》にさへ君に仕ふる道はありけり
みだれ世のうき世の中にまじらなく山家は人の住みよからまし
草まくら夜ふす猪《しし》の床《とこ》とはに宿りさだめぬ身にもあるかな
つはものに数ならぬ身も神にます我が大君の御楯《みたて》ともがな
木曾山の八岳《やたけ》ふみこえ君がへに草むす屍《かばね》ゆかむとぞおもふ
[#地から7字上げ]嘉治
[#ここで字下げ終わり]
「亀山は亀山らしい歌を残して行きましたね。思い入った人の歌ですね。」
 と景蔵が言うと、半蔵は炬燵《こたつ》の上に手を置きながら、
「あの騒ぎの中で、亀山とは一晩じゅう話してしまいました。もっとも、番士は交代で篝《かがり》を焚《た》く、村のものは村のもので宿内を警戒する、火の番は回って来る、なかなか寝られるようなものじゃありませんでしたよ。わたしも興奮し
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