ましてね、あの翌晩もひとりで起きていて、旧作の長歌を一晩かかって書き改めたりなぞしましたよ。」
 ちょうどその時、年寄役の伊之助が村方の用事をもって家の囲炉裏ばたまで見えたので、半蔵は伊那行きのことを伊之助に話しかつ留守中のことをも頼んで置くつもりで、ちょっとその席をはずした。そして、店座敷へ引き返して来て見ると、景蔵、香蔵の二人はお民にすすめられて、かわるがわる風呂場《ふろば》の方へからだを温《あたた》めに行っていた。
「半蔵、なんにもないが、お客さまに一杯あげる。ごらんな、お客さまというと子供が大はしゃぎだよ。にぎやかでありさえすれば子供はうれしいんだね。」
 と継母のおまんが言うころは、店座敷の障子も薄暗い。下女は行燈《あんどん》をさげて来た。
 やがて、こうした土地での習いで、炬燵板《こたついた》の上を食卓に代用して、半蔵は二人の友だちに山家の酒をすすめた。
「愉快、愉快。」と香蔵はそこへ心づくしの手料理を運んで来るお民を見て言った。「奥さんの前ですが、わたしたちが三人寄ることはこれでめったにないんです。半蔵さんとわたしと二人の時は、景蔵さんは京都の方へ行ってる。景蔵さんと一緒
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