田の商人が横浜貿易で一万両からの金をもうけたことを聞き出し、すくなくも二、三百両の利得を吐き出させるために、二人の番士付きで伊那から護送して来た。きびしく軍の掠奪《りゃくだつ》を戒め、それを犯すものは味方でも許すまいとしている浪士らにも一方にはこのお灸《きゅう》の術があった。ヨーロッパに向かって、この国を開くか開かないかはまだ解決のつかない多年の懸案であって、幕府に許されても朝廷から許されない貿易は売国であるとさえ考えるものは、排外熱の高い水戸浪士中に少なくなかったのである。
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第十一章
一
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「青山君――伊那にある平田門人の発起《ほっき》で、近く有志のものが飯田《いいだ》に集まろうとしている。これはよい機会と思われるから、ぜひ君を誘って一緒に伊那の諸君を見に行きたい。われら両人はその心組みで馬籠《まごめ》までまいる。君の都合もどうあろうか。ともかくもお訪《たず》ねする。」
[#地から4字上げ]中津川にて
[#地から2字上げ]景蔵
[#地から2字上げ]香蔵
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馬籠にある半蔵あてに、二人《ふたり》の友
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