まで行こうとしますまい。水戸の城下の方で討死《うちじに》の覚悟をするだろうと思いますね。」
「そりゃ、半蔵。老人ばかりなら、最初から筑波山《つくばさん》には立てこもるまいよ。」
父と子は互いに顔を見合わせた。
幕府への遠慮から、駅長としての半蔵は家の門前に「武田伊賀守様|御宿《おんやど》」の札も公然とは掲げさせなかったが、それでも玄関のところには本陣らしい幕を張り回させた。表向きの出迎えも遠慮して、年寄役伊之助と組頭《くみがしら》庄助《しょうすけ》の二人と共に宿はずれまで水戸の人たちを迎えようとした。
「お母《っか》さん、お願いしますよ。」
と彼が声をかけて行こうとすると、おまんはあたりに気を配って、堅く帯を締め直したり、短刀をその帯の間にはさんだりしていた。
もはや、太鼓の音だ。おのおの抜き身の鎗《やり》を手にした六人の騎馬武者と二十人ばかりの歩行《かち》武者とを先頭にして、各部隊が東の方角から順に街道を踏んで来た。
この一行の中には、浪士らのために人質に取られて、腰繩《こしなわ》で連れられて来た一人の飯田の商人もあった。浪士らは、椀屋文七《わんやぶんしち》と聞こえたこの飯
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