のできたころ、彼は広い囲炉裏ばたへ通って、そこへ裏二階から母屋《もや》の様子を見に来る父|吉左衛門《きちざえもん》とも一緒になった。
「何しろ、これはえらい騒ぎになった。」と吉左衛門は案じ顔に言った。「文久元年十月の和宮《かずのみや》さまがお通り以来だぞ。千何百人からの同勢をこんな宿場で引き受けようもあるまい。」
「お父《とっ》さん、そのことなら、落合の宿でも分けて引き受けると言っています。」と半蔵が言う。
「今夜のお客さまの中には、御老人もあるそうだね。」
「その話ですが、山国兵部という人はもう七十以上だそうです。武田耕雲斎、田丸稲右衛門、この二人も六十を越してると言いますよ。」
「おれも聞いた。人が六、七十にもなって、全く後方《うしろ》を振り返ることもできないと考えてごらんな。生命《いのち》がけとは言いながら――えらい話だぞ。」
「今度は東湖先生の御子息さんも御一緒です。この藤田小四郎という人はまだ若い。二十三、四で一方の大将だというから驚くじゃありませんか。」
「おそろしく早熟なかただと見えるな。」
「まあ、お父《とっ》さん。わたしに言わせると、浪士も若いものばかりでしたら、京都
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