》の生まれ、降蔵《こうぞう》と申します。お約束のとおり片桐までお供をいたしました。これでお暇《いとま》をいただきます。」
「何、諏訪だ?」
 いきなり浪士はその降蔵を帯で縛りあげた。それから言葉をつづけた。
「その方は天誅《てんちゅう》に連れて行くから、そう心得るがいい。」
 近くにある河《かわ》のところまで浪士は後ろ手にくくった百姓を引き立てた。「天誅」とはどういうわけかと降蔵が尋ねると、天誅とは首を切ることだと浪士が言って見せる。不幸な百姓は震えた。
「お武家様、わたくしは怪しい者でもなんでもございません。伊那《いな》[#「伊那」は底本では「伊奈」]辺まで用事があってまいる途中、御通行ということで差し控えていたものでございます。これからはいかようにもお供をいたしますから、お助けを願います。」
「そうか。しからば、その方は正武隊に預けるから、兵糧方《ひょうろうかた》の供をいたせ。」
 人足一人を拾って行くにも、浪士らはこの調子だった。
 諸隊はすでに続々間道を通過しつつある。その道は飯田の城下を避けて、上黒田で右に折れ、野底山から上飯田にかかって、今宮という方へと取った。今宮に着いた
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