たの立場を思い、飯田藩の立場を思いまして、及ばずながら斡旋《あっせん》の労を執りたい考えで同道してまいりました。わたしたちは三人とも平田|篤胤《あつたね》の門人です。」
 浪士らの幹部の前には、そういうめずらしい人たちがあらわれた。そのうちの一人《ひとり》は伊那座光寺《いなざこうじ》にある熱心な国学の鼓吹者《こすいしゃ》仲間で、北原稲雄が弟の今村豊三郎《いまむらとよさぶろう》である。一人は将軍最初の上洛《じょうらく》に先立って足利尊氏《あしかがたかうじ》が木像の首を三条河原《さんじょうがわら》に晒《さら》した示威の関係者、あの事件以来伊那に来て隠れている暮田正香《くれたまさか》である。
 入り込んで来る間諜《かんちょう》を警戒する際で、浪士側では容易にこの三人を信じなかった。その時応接に出たのは道中|掛《がか》りの田村宇之助《たむらうのすけ》であったが、字之助は思いついたように尋ねた。
「念のためにうかがいますが、伊那の平田御門人は『古史伝』の発行を企てているように聞いています。あれは何巻まで行ったでしょうか。」
「そのことですか。今じゃ第四|帙《ちつ》まで進行しております。一帙四巻と
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