浪士らの長い行列は夜の街道に続いた。落合村まで進み、下の原村まで進んだ。もはやその辺には一人の敵の踏みとどまるものもなかった。
 合図の空砲の音と共に、浪士らの先着隊が下諏訪にはいったころは夜も深かった。敗退した諏訪松本両勢は高島城の方角をさして落ちて行ったあとで、そこにも一兵を見ない。町々もからっぽだ。浪士らは思い思いの家を見立てて、鍋釜《なべかま》から洗い米などの笊《ざる》にそのまま置き捨ててあるようなところへはいった。耕雲斎は問屋《といや》の宅に、稲右衛門は来迎寺《らいごうじ》にというふうに。町々の辻《つじ》、秋宮《あきみや》の鳥居前、会所前、湯のわき、その他ところどころに篝《かがり》が焚《た》かれた。四、五人ずつの浪士は交代で敵の夜襲を警戒したり、宿内の火の番に回ったりした。
 三百人ばかりの後陣の者は容易に下諏訪へ到着しない。今度の戦闘の遊軍で、負傷者などを介抱するのもそれらの人たちであったから、道に隙《ひま》がとれておくれるものと知れた。その間、本陣に集まる幹部のものの中にはすでに「明日」の評定がある。もともと浪士らは高島城を目がけて来たものでもない。西への進路を切り開くた
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