落とし、思い思いのところに土深く納めさせた。深手《ふかで》に苦しむものは十人ばかりある。それも歩人《ぶにん》に下知して戸板に載せ介抱を与えた。こういう時になくてならないのは二人の従軍する医者の手だ。陣中には五十ばかりになる一人の老女も水戸から随《つ》いて来ていたが、この人も脇差を帯の間にさしながら、医者たちを助けてかいがいしく立ち働いた。
夜もはや四つ半時を過ぎた。浪士らは味方の死骸《しがい》を取り片づけ、名のある人々は草小屋の中に引き入れて、火をかけた。その他は死骸のあるところでいささかの火をかけ、土中に埋《うず》めた。仮りの埋葬も済んだ。樋橋には敵の遺棄した兵糧や弁当もあったので、それで一同はわずかに空腹をしのいだ。激しい饑《う》え。激しい渇《かわ》き。それを癒《いや》そうためばかりにも、一同の足は下諏訪の宿へ向いた。やがて二十五人ずつ隊伍《たいご》をつくった人たちは樋橋を離れようとして、夜の空に鳴り渡る行進の法螺《ほら》の貝を聞いた。
樋橋から下諏訪までの間には、村二つほどある。道案内のものを先に立て、松明《たいまつ》も捨て、途中に敵の待ち伏せするものもあろうかと用心する
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