る。見ると、神社の祭礼のおりに、服装のみすぼらしい浪人とあなどって、腕白盛《わんぱくざか》りのいたずらから多勢を頼みに悪口を浴びせかけた背の高い男がそこにたたずんでいる。浪人は一人ぽっちの旅烏《たびがらす》なので、祭りのおりには知らぬ顔で通り過ぎたが、その時は少年の素通りを許さなかった。よくも悪口雑言《あっこうぞうごん》を吐いて祭りの日に自分を辱《はずか》しめたと言って、一人と一人で勝負をするから、その覚悟をしろと言いながら、刀の柄《つか》に手をかけた。少年も負けてはいない。かねてから勝負の時には第一撃に敵を斬《き》ってしまわねば勝てるものではない、それには互いに抜き合って身構えてからではおそい。抜き打ちに斬りつけて先手を打つのが肝要だとは、日ごろ親から言われていた少年のことだ。居合《いあい》の心得は充分ある。よし、とばかり刀の下《さ》げ緒《お》をとって襷《たすき》にかけ、袴《はかま》の股立《ももだ》ちを取りながら先方の浪人を見ると、その身構えがまるで素人《しろうと》だ。掛け声勇ましくこちらは飛び込んで行った。抜き打ちに敵の小手《こて》に斬りつけた。あいにくと少年のことで、一尺八寸ばか
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