んだ子弟が、なんと言ってもその中堅を成す人たちであったのだ。名高い水戸の御隠居(烈公《れっこう》)が在世の日、領内の各地に郷校を設けて武士庶民の子弟に文武を習わせた学館の組織はやや鹿児島《かごしま》の私学校に似ている。水戸浪士の運命をたどるには、一応彼らの気質を知らねばならない。


 寺がある。付近は子供らの遊び場処である。寺には閻魔《えんま》大王の木像が置いてある。その大王の目がぎらぎら光るので、子供心にもそれを水晶であると考え、得がたい宝石を欲《ほ》しさのあまり盗み取るつもりで、昼でも寂しいその古寺の内へ忍び込んだ一人《ひとり》の子供がある。木像に近よると、子供のことで手が届かない。閻魔王の膝《ひざ》に上り、短刀を抜いてその目をえぐり取り、莫大《ばくだい》な分捕《ぶんど》り品でもしたつもりで、よろこんで持ち帰った。あとになってガラスだと知れた時は、いまいましくなってその大王の目を捨ててしまったという。これが九歳にしかならない当時の水戸の子供だ。
 森がある。神社の鳥居がある。昼でも暗い社頭の境内がある。何げなくその境内を行き過ぎようとして、小僧待て、と声をかけられた一人の少年があ
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