ろで、早く国の方へ引き揚げるんですね――長居は無用ですよ。」
平助は平助らしいことを言った。
ともかくも、地方の事情を直接に道中奉行の耳に入れただけでも、十一宿総代として江戸へ呼び出された勤めは果たした。請書《うけしょ》は出した。今度は帰りじたくだ。半蔵らは東片町にある山村氏の屋敷から一時旅費の融通《ゆうずう》をしてもらって、長い逗留《とうりゅう》の間に不足して来た一切の支払いを済ませることにした。ところが、東片町には何かの機会に一|盃《ぱい》やりたい人たちがそろっていて、十一宿の願書が首尾よく納まったと聞くからには、とりあえず祝おう、そんなことを先方から切り出した。江戸詰めの侍たちは、目立たないところに料理屋を見立てることから、酒を置き、芸妓《げいぎ》を呼ぶことまで、その辺は慣れたものだ。半蔵とてもその席に一座して交際|上手《じょうず》な人たちから祝盃《しゅくはい》をさされて見ると、それを受けないわけに行かなかったが、宿方の用事で出て来ている身には酒も咽喉《のど》を通らなかった。その日は酒盛《さかも》り最中に十月ももはや二十日過ぎらしい雨がやって来た[#「やって来た」は底本では「
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