たりの留守居役を通しても、もっとてきぱき運ぶ方法がありはしないかなどと謎《なぞ》をかけるものがある。そんな無責任な人の言うことが一層半蔵をさびしがらせた。
「さぞ、御退屈でしょう。」
 と言って相生町《あいおいちょう》の家の亭主《ていしゅ》が深川の米問屋へ出かける前に、よく半蔵を見に来る。四か月も二階に置いてもらううちに、半蔵はこの人を多吉さんと呼び、かみさんをお隅《すみ》さんと呼び、清元《きよもと》のけいこに通《かよ》っている小娘のことをお三輪《みわ》さんと呼ぶほどの親しみを持つようになった。
「青山さん、宅じゃこんな勤めをしていますが、たまにお暇《ひま》をもらいまして、運座《うんざ》へ出かけるのが何よりの楽しみなんですよ。ごらんなさい、わたしどもの家には白い団扇《うちわ》が一本も残っていません。一夏もたって見ますと、どの団扇にも宅の発句《ほっく》が書き散らしてあるんですよ。」
 お隅がそれを半蔵に言って見せると、多吉は苦笑《にがわら》いして、矢立てを腰にすることを忘れずに深川米の積んである方へ出かけて行くような人だ。
 筑波《つくば》の騒動以来、関東の平野の空も戦塵《せんじん》にお
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