首尾《しゅび》の松あたりを納涼の場所とし、両国を遊覧の起点とする江戸で、柳橋につないである多くの屋形船《やかたぶね》は今後どうなるだろうなどと言って見せるのもこの人だ。川一丸、関東丸、十一間丸などと名のある大船を水に浮かべ、舳先《へさき》に鎗《やり》を立てて壮《さか》んな船遊びをしたという武家全盛の時代を引き合いに出さないまでも、船屋形の両辺を障子で囲み、浅草川に暑さを避けに来る大名旗本の多かったころには、水に流れる提灯《ちょうちん》の影がさながら火の都鳥であったと言って見せるのもこの話し好きの人だ。
「半蔵さん、まあ話しておいでなさるさ。」
と平助も二階へ上がらずにいて、半蔵と一緒にその店先でしばらく旅らしい時を送ろうとしていた。その時、隠居は思い出したように、
「青山さん、あれから宮川先生もどうなすったでしょう。浜の貿易にはあの先生もしっかりお儲《もう》けでございましたろうねえ。なんでも一|駄《だ》もあるほどの小判《こばん》を馬につけまして、宰領の衆も御一緒で、中津川へお帰りの時も手前どもから江戸をお立ちになりましたよ。」
これには半蔵も答えられなかった。彼は忘れがたい旧師のこ
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