をつぐんだ。水戸はどんなに騒いでいるだろうかとも、江戸詰めの諸藩の家中や徳川の家の子郎党なぞはどんな心持ちで筑波の方を望みながらこの橋を渡るだろうかとも、そんな話は出なかった。ただただ平助は昔風の庄屋気質《しょうやかたぎ》から、半蔵と共に旅の心配を分《わか》つのほかはなかった。
 その時、半蔵は向こうから橋を渡って帰って来る二人連れの女の子にもあった。その一人は相生町の家の娘だ。清元《きよもと》の師匠のもとからの帰りででもあると見えて、二人とも稽古本《けいこぼん》を小脇《こわき》にかかえながら橋を渡って来る。ちょうど半蔵が郷里の馬籠の家に残して置いて来たお粂《くめ》を思い出させるような年ごろの小娘たちだ。
「半蔵さん、相生町にはあんな子供があるんですか。」
 と平助が言っているところへ、一人の方の女の子が近づいて来て、半蔵にお辞儀をして通り過ぎた。後ろ姿もかわいらしい。男の子のように結った髪のかたちから、さっぱりとした浴衣《ゆかた》に幅の狭い更紗《さらさ》の帯をしめ、後ろにたれ下がった浅黄《あさぎ》の付け紐《ひも》を見せたところまで、ちょっと女の子とは見えない。小娘ではありながら男の子
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