きびら》の羽織に漆紋《うるしもん》と言われるが、往昔《むかし》家康公《いえやすこう》が関ヶ原の合戦に用い、水戸の御隠居も生前好んで常用したというそんな武張《ぶば》った風俗がまた江戸に回《かえ》って来た。
両国をさして帰って行く途中、平助は連れを顧みて、
「半蔵さん、君は時々立ち止まって、じっとながめているような人ですね。」
「御覧なさい、小さな宮本武蔵《みやもとむさし》や荒木又右衛門《あらきまたえもん》がいますよ。」
「ほんとに、江戸じゃ子供まで武者修行のまねだ。一般の人気がこうなって来たんでしょうかね。」
そういう平助は実にゆっくりゆっくりと歩いた。
その日は風の多い日で、半蔵らは柳原《やなぎわら》の土手にかかるまでに何度かひどい砂塵《すなぼこり》を浴びた。往《い》きには追い風であったから、まだよかったが、戻《もど》りには向い風になったからたまらない。土手の柳の間に古着《ふるぎ》古足袋《ふるたび》古股引《ふるももひき》の類《たぐい》を並べる露店から、客待ち顔な易者の店までが砂だらけだ。目もあけていられないようなやつが、また向こうからやって来る。そのたびに半蔵らは口をふさぎ、顔を
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