めた》い――』
『手が冷い? そんなら早く行つて炬燵《おこた》へあたれ。』
斯《か》う言つて、凍つた手を握〆《にぎりしめ》ながら、細君はお末を奥の方へ連れて行つた。
其時は地主も炉辺《ろばた》を離れた。真綿帽子を襟巻がはりにして、袖口と袖口とを鳥の羽翅《はがひ》のやうに掻合せ、半ば顔を埋《うづ》め、我と我身を抱き温め乍ら、庭に立つて音作兄弟の仕度するのを待つて居た。
『奈何《どう》でござんすなあ、籾《もみ》のこしらへ具合は。』
と音作は地主の顔を眺める。地主の声は低くて、其返事が聞取れない位。軈《やが》て、白い手を出して籾を抄《すく》つて見た。一粒口の中へ入れて、掌上《てのひら》のをも眺《なが》め乍《なが》ら、
『空穀《しひな》が有るねえ。』
と冷酷《ひやゝか》な調子で言ふ。音作は寂しさうに笑つて、
『空穀でも無いでやす――雀には食はれやしたが、しかし坊主(稲の名)が九分で、目は有りやすよ。まあ、一俵|造《こしら》へて掛けて見やせう。』
六つばかりの新しい俵が其処へ持出された。音作は箕《み》の中へ籾を抄入《すくひい》れて、其を大きな円形の一斗桝へうつす。地主は『とぼ』(丸棒)
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