を取つて桝の上を平に撫《な》で量《はか》つた。俵の中へは音作の弟が詰めた。尤《もつと》も弟は黙つて詰めて居たので、兄の方は焦躁《もどか》しがつて、『貴様これへ入れろ――声掛けなくちや御年貢のやうで無くて不可《いけない》。』と自分の手に持つ箕《み》を弟の方へ投げて遣つた。
『さあ、沢山《どつしり》入れろ――一わたりよ、二わたりよ。』
と呼ぶ音作の声が起つた。一俵につき大桝で六斗づゝ、外に小桝で――娘が来て投げて置いて行つたので、三升づゝ、都合六斗三升の籾の俵が其処へ並んだ。
『六俵で内取に願ひやせう。』
と音作は俵蓋《さんだはら》を掩《おほ》ひ冠せ乍ら言つた。地主は答へなかつた。目を細くして無言で考へて居るは、胸の中に十露盤《そろばん》を置いて見るらしい。何時《いつ》の間にか音作の弟が大きな秤《はかり》を持つて来た。一俵掛けて、兄弟してうんと力を入れた時は、二人とも顔が真紅《まつか》に成る。地主は衡《はかりざを》の平均《たひら》になつたのを見澄まして、錘《おもり》の糸を動かないやうに持添へ乍ら調べた。
『いくら有やす。』と音作は覗《のぞ》き込んで、『むゝ、出放題《ではうでえ》あるは―
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