居ながら、唯|女性《をんな》といふものにかけて、非常に弱い性質《たち》の男があるものだね。蓮華寺の住職も矢張《やはり》其だらうと思ふよ。彼程《あれほど》学問もあり、弁才もあり、何一つ備はらないところの無い好い人で、殊《こと》に宗教《をしへ》の方の修行もして居ながら、それでまだ迷が出るといふのは、君、奈何《どう》いふ訳だらう。我輩は娘から彼《あ》の住職のことを聞いた時、どうしても其が信じられなかつた。いや、嘘だとしか思はれなかつた。実に人は見かけによらないものさね。ホラ、彼の住職も長いこと西京へ出張して居ましたよ。丁度帰つて来たのは、君が郷里の方へ行つて留守だつた時さ。それからといふものは、まあ娘に言はせると、奈何《どう》しても養父《おとつ》さんの態度《しむけ》とは思はれないと言ふ。かりそめにも仏の御弟子ではないか。袈裟《けさ》を着《つけ》て教を説く身分ではないか。自分の職業に対しても、もうすこし考へさうなものだと思ふんだ。あまり浅猿《あさま》しい、馬鹿馬鹿しいことで、他《ひと》に話も出来ないやね。奥様はまた奥様で、彼様《あゝ》いふ性質の女だから、人並勝れて嫉妬深《しつとぶか》いと来て居
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