脱いで入つて、例の風呂敷包を何気なく取出した。『すこしばかり書籍《ほん》を持つて来ました――奈何《どう》でせう、是《これ》を引取つて頂きたいのですが。』と其を言へば、亭主は直に丑松の顔色を読んで、商人《あきんど》らしく笑つて、軈《やが》て膝を進め乍ら風呂敷包を手前へ引寄せた。
『ナニ、幾許《いくら》でも好いんですから――』
 と丑松は添加《つけた》して言つた。
 亭主は風呂敷包を解《ほど》いて、一冊々々書物の表紙を調べた揚句、それを二通りに分けて見た。語学の本は本で一通り。兎も角も其丈《それだけ》は丁寧に内部《なかみ》を開けて見て、それから蓮太郎の著したものは無造作に一方へ積重ねた。
『何程《いかほど》ばかりで是は御譲りに成る御積りなんですか。』と亭主は丑松の顔を眺めて、さも持余したやうに笑つた。
『まあ、貴方の方で思つたところを附けて見て下さい。』
『どうも是節は不景気でして、一向に斯《か》ういふものが捌《は》けやせん。御引取り申しても好うごはすが、しかし金高があまり些少《いさゝか》で。実は申上げるにしやしても、是方《こちら》の英語の方だけの御直段《おねだん》で、新刊物の方はほんの御
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