成るべく外套の袖で隠すやうにして、軈てぶらりと蓮華寺の門を出た。

       (四)

 雪は往来にも、屋根の上にもあつた。『みの帽子』を冠り、蒲《がま》の脛穿《はゞき》を着け、爪掛《つまかけ》を掛けた多くの労働者、または毛布を頭から冠つて深く身を包んで居る旅人の群――其様《そん》な手合が眼前《めのまへ》を往つたり来たりする。人や馬の曳く雪橇《ゆきぞり》は幾台《いくつ》か丑松の側を通り過ぎた。
 長い廻廊のやうな雪除《ゆきよけ》の『がんぎ』(軒廂《のきびさし》)も最早《もう》役に立つやうに成つた。往来の真中に堆高《うづだか》く掻集めた白い小山の連接《つゞき》を見ると、今に家々の軒丈よりも高く降り積つて、これが飯山名物の『雪山』と唄《うた》はれるかと、冬期の生活《なりはひ》の苦痛《くるしみ》を今更のやうに堪へがたく思出させる。空の模様はまた雪にでも成るか。薄い日のひかりを眺めたばかりでも、丑松は歩き乍ら慄《ふる》へたのである。
 上町《かみまち》の古本屋には嘗《かつ》て雑誌の古を引取つて貰つた縁故もあつた。丁度其|店頭《みせさき》に客の居なかつたのを幸《さいはひ》、ついと丑松は帽子を
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