ほこり》を払つて、一緒にして風呂敷に包んで居ると、丁度そこへ袈裟治が入つて来た。
『御出掛?』
 斯う声を掛ける。丑松はすこし周章《あわ》てたといふ様子して、別に返事もしないのであつた。
『この寒いのに御出掛なさるんですか。』と袈裟治は呆《あき》れて、蒼《あを》ざめた丑松の顔を眺めた。『気分が悪くて寝て居なさる人が――まあ。』
『いや、もう悉皆《すつかり》快くなつた。』
『ほゝゝゝゝ。それはさうと、御腹《おなか》が空きやしたらう。何か食べて行きなすつたら――まあ、貴方《あんた》は今朝から何《なんに》も食べなさらないぢやごはせんか。』
 丑松は首を振つて、すこしも腹は空かないと言つた。壁に懸けてある外套《ぐわいたう》を除《はづ》して着たのも、帽子を冠つたのも、着る積りも無く着、冠る積りも無く冠つたので、丁度感覚の無い器械が動くやうに、自分で自分の為《す》ることを知らない位であつた。丑松はまた、友達が持つて来て呉れた月給を机の抽匣《ひきだし》の中へ入れて、其内を紙の袋のまゝ袂へも入れた。尤も幾許《いくら》置いて、幾許自分の身に着けたか、それすら好くは覚えて居ない。斯うして書物の包を提げて、
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