説は兎《と》に角《かく》若いものゝ知らないことであつた。それから自分の意見を述べて、いよ/\結末《くゝり》といふ段になると、毎時《いつも》住職は同じやうな説教の型に陥る。自力で道に入るといふことは、白隠のやうな人物ですら容易で無い。吾他力宗は単純《ひとへ》に頼むのだ。信ずるのだ。導かれるのだ。凡夫の身をもつて達するのだ。呉々も自己《おのれ》を捨てゝ、阿弥陀如来《あみだによらい》を頼み奉るの外は無い。斯う住職は説き終つた。
『なむあみだぶ、なむあみだぶ。』
 と人々の唱へる声は暫時《しばらく》止まなかつた。多くの賽銭はまた畳の上に集つた。お志保も殊勝らしく掌《て》を合せて、奥様と一緒に唱へて居たが、涙は其若い頬を伝つて絶間《とめど》も無く流れ落ちたのである。
 やがて聴衆は珠数を提《さ》げて帰つて行つた。奥様も、お志保も、今は座を離れて、円柱の側に佇立《たゝず》み乍ら、人々に挨拶したり見送つたりした。雪がまた降つて来たといふので、本堂の入口は酷《ひど》く雑踏する。女連は多く後になつた。殊に思ひ/\の風俗して、時の流行《はやり》に後れまいとする町の娘の有様は、深く/\お志保の注意を引くので
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