聴いて、其程胸を打たれようとは、奈何《どう》しても思はれなかつたのである。
 省吾はそろ/\眠くなつたと見え、姉に倚凭《よりかゝ》つた儘《まゝ》、首を垂れて了《しま》つた。お志保はいろ/\に取賺《とりすか》して、動《ゆす》つて見たり、私語《さゝや》いて見たりしたが、一向に感覚が無いらしい。
『これ――もうすこし起きておいでなさいよ。他様《ひとさま》が見て笑ふぢや有《あり》ませんか。』と叱るやうに言つた。奥様は引取つて、
『其処へ寝かして置くが可《いゝ》やね。ナニ、子供のことだもの。』
『真実《ほんと》に未《ま》だ児童《ねんねえ》で仕方が有ません。』
 斯う言つて、お志保は省吾を抱直した。殆んど省吾は何にも知らないらしい。其時丑松が顔を差出したので、お志保も是方《こちら》を振向いた。お志保は文平を見て、奥様を見て、それから丑松を見て、紅《あか》くなつた。

       (五)

 法話の第三部は白隠に関する伝説を主にしたものであつた。昔、飯山の正受菴《しやうじゆあん》に恵端禅師といふ高僧が住んだ。白隠が斯の人を尋ねて、飯山へやつて来たのは、まだ道を求めて居る頃。参禅して教を聴く積りで、
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