だぶ。』
と人々の唱へる声は本堂の広間に満ち溢れた。男も、女も、懐中《ふところ》から紙入を取出して、思ひ/\に賽銭《さいせん》を畳の上へ置くのであつた。
法話の第二部は、昔の飯山の城主、松平遠江守の事蹟を材《たね》に取つた。そも/\飯山が仏教の地と成つたは、斯の先祖の時代からである。火のやうな守《かみ》の宗教心は未だ年若な頃からして燃えた。丁度江戸表へ参勤の時のこと、日頃|欝積《むすぼ》れて解けない胸中の疑問を人々に尋ね試みたことがある。『人は死んで、畢竟《つまり》奈何《どう》なる。』侍臣も、儒者も、斯問《このとひ》には答へることが出来なかつた。林|大学《だいがく》の頭《かみ》に尋ねた。大学の頭ですらも。それから守は宗教に志し、渋谷の僧に就いて道を聞き、領地をば甥《をひ》に譲り、六年目の暁に出家して、飯山にある仏教の先祖《おや》と成つたといふ。なんと斯|発心《ほつしん》の歴史は味《あぢはひ》のある話ではないか。世の多くの学者が答へることの出来ない、其難問に答へ得るものは、信心あるものより外に無い。斯う住職は説き進んだのである。
『なむあみだぶ、なむあみだぶ。』
一斉に唱へる声は風
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