噤んで了つた。人々はいづれも座《すわ》り直したり、容《かたち》を改めたりした。

       (四)

 住職は奥様と同年《おないどし》といふ。男のことであるから割合に若々しく、墨染《すみぞめ》の法衣《ころも》に金襴《きんらん》の袈裟《けさ》を掛け、外陣の講座の上に顕はれたところは、佐久小県辺《さくちひさがたあたり》に多い世間的な僧侶に比べると、遙《はる》かに高尚な宗教生活を送つて来た人らしい。額広く、鼻隆く、眉すこし迫つて、容貌《おもばせ》もなか/\立派な上に、温和な、善良な、且つ才智のある性質を好く表して居る。法話の第一部は猿の比喩《たとへ》で始まつた。智識のある猿は世に知らないといふことが無い。よく学び、よく覚え、殊に多くの経文を暗誦して、万人の師匠とも成るべき程の学問を蓄はへた。畜生の悲しさには、唯だ一つ信ずる力を欠いた。人は、よし是猿ほどの智識が無いにもせよ、信ずる力あつて、はじめて凡夫も仏の境には到り得る。なんと各々位《おの/\がた》、合点か。人間と生れた宿世《すくせ》のありがたさを考へて、朝夕念仏を怠り給ふな。斯《か》う住職は説出したのである。
『なむあみだぶ、なむあみ
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