筆に成つたものと見えて、ありふれた図に比べると余程|活々《いき/\》して居た。まあ、宗教《をしへ》の方の情熱が籠るとは見えない迄も、何となく人の心を※[#「女+無」、第4水準2−5−80]《ひきつ》ける樸実《まじめ》なところがあつた。流石《さすが》、省吾は未だ子供のことで、其|禽獣《とりけもの》の悲嘆《なげき》の光景《さま》を見ても、丁度お伽話《とぎばなし》を絵で眺めるやうに、別に不思議がるでも無く、驚くでも無い。無邪気な少年はたゞ釈迦《しやか》の死を見て笑つた。
『あゝ。』と丑松は深い溜息を吐《つ》いて、『省吾さんなぞは未だ死ぬといふことを考へたことが有ますまいねえ。』
『私《わし》がでごはすか。』と省吾は丑松の顔を見上げる。
『さうさ――君がサ。』
『はゝゝゝゝ。ごはせんなあ、其様《そん》なことは。』
『左様だらうねえ。君等の時代に其様なことを考へるやうなものは有ますまいねえ。』
『ふゝ。』と省吾は思出したやうに笑つて、『お志保姉さんも克《よ》く其様なことを言ひやすよ。』
『姉さんも?』と丑松は熱心な眸を注いだ。
『はあ、あの姉さんは妙なことを言ふ人で、へえもう死んで了ひたいの、誰
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