。見れば校長で、何か穿鑿《さぐり》を入れるやうな目付して、何時の間にか腰掛のところへ来て佇立《たゝず》んで居た。
『今――新聞を読んで居たところです。』と丑松は何気ない様子を取装《とりつくろ》つて言つた。
『新聞を?』と校長は不思議さうに丑松の顔を眺めて、『へえ、何か面白い記事《こと》でも有ますかね。』
『ナニ、何でも無いんです。』
 暫時《しばらく》二人は無言であつた。校長は窓の方へ行つて、玻璃越《ガラスご》しに空の模様を覗《のぞ》いて見て、
『瀬川君、奈何でせう、斯の御天気は。』
『左様ですなあ――』
 斯ういふ言葉を取交し乍ら、二人は一緒に講堂を出た。並んで階段を下りる間にも、何となく丑松は胸騒ぎがして、言ふに言はれぬ不快な心地《こゝろもち》に成るのであつた。
 邪推かは知らないが、どうも斯《こ》の校長の態度《しむけ》が変つた。妙に冷淡《しら/″\》しく成つた。いや、冷淡しいばかりでは無い、可厭《いや》に神経質な鼻でもつて、自分の隠して居る秘密を嗅ぐかのやうにも感ぜらるゝ。『や?』と猜疑深《うたぐりぶか》い心で先方《さき》の様子を推量して見ると、さあ、丑松は斯の校長と一緒に並んで
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