二時から三時まで、それだけは丑松も自由であつたので、不図、蓮太郎のことが書いてあつたとかいふ昨日の銀之助の話を思出して、応接室を指して急いで行つた。いつも其机の上には新聞が置いてある。戸を開けて入つて見ると、信毎は一昨日の分も残つて、まだ綴込みもせずに散乱《とりちら》した儘。その読みふるしを開けた第二面の下のところに、彼の先輩のことを見つけた時は、奈何《どんな》に丑松も胸を踊らせて、『むゝ――あつた、あつた』と驚き喜んだらう。
『何処へ行つて是《この》新聞を読まう。』先づ心に浮んだは斯うである。『斯《こ》の応接室で読まうか。人が来ると不可《いけない》。教室が可《いゝ》か。小使部屋が可か――否、彼処へも人が来ないとは限らない。』と思ひ迷つて、新聞紙を懐に入れて、応接室を出た。『いつそ二階の講堂へ行つて読め。』斯う考へて、丑松は二階へ通ふ階段を一階づゝ音のしないやうに上つた。
 そこは天長節の式場に用ひられた大広間、長い腰掛が順序よく置並べてあるばかり、平素《ふだん》はもう森閑《しんかん》としたもので、下手な教室の隅なぞよりは反つて安全な場処のやうに思はれた。とある腰掛を択《えら》んで、懐
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