》其通り、何も話す必要は有ません。一体、私は左様|他人《ひと》のことを喋舌《しやべ》るのが嫌ひです――まして、貴方とは今日始めて御目に懸つたばかりで――』
『そりやあ成程、私のことを御話し下さる必要は無いかも知れません。私も貴方のことを他人《ひと》に言ふ必要は無いのです。必要は無いのですが――どうも其では何となく物足りないやうな心地《こゝろもち》が致しまして。折角《せつかく》私も斯うして出ましたものですから、十分に御意見を伺つた上で、御為に成るものなら成りたいと存じて居りますのです。実は――左様した方が、貴方の御為かとも。』
『いや、御親切は誠に難有いですが、其様《そんな》にして頂く覚は無いのですから。』
『しかし、私が斯うして御話に出ましたら、万更《まんざら》貴方だつて思当ることが無くも御座《ござい》ますまい。』
『それが貴方の誤解です。』
『誤解でせうか――誤解と仰ることが出来ませうか。』
『だつて、私は何《なんに》も知らないんですから。』
『まあ、左様《さう》仰れば其迄ですが――でも、何とか、そこのところは御相談の為やうが有さうなもの。悪いことは申しません。御互ひの身の為です。決
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