て居ましても、畢竟《つまり》猪子といふ人を抱きこんで、道具に使用《つか》ふといふ腹に相違ないんです。彼の男が高尚らしいやうなことを言ふかと思ふと、私は噴飯《ふきだ》したくなる。そりやあもう、政事屋なんてものは皆な穢《きたな》い商売人ですからなあ――まあ、其道のもので無ければ、可厭《いや》な内幕も克《よ》く解りますまいけれど。』
 斯う言つて、高柳は嘆息して、
『私とても、斯うして何時まで政界に泳いで居る積りは無いのです。一日も早く足を洗ひたいといふ考へでは有るのです。如何《いかん》せん、素養は無し、貴方等《あなたがた》のやうに規則的な教育を享《う》けたでは無し、それで此の生存競争の社会《よのなか》に立たうといふのですから、勢ひ常道を踏んでは居られなくなる。あるひは、貴方等の目から御覧に成つたらば、吾儕《わたしども》の事業《しごと》は華麗《はで》でせう。成程《なるほど》、表面《うはべ》は華麗です。しかし、これほど表面が華麗で、裏面《うら》の悲惨な生涯《しやうがい》は他に有ませうか。あゝ、非常な財産が有つて、道楽に政事でもやつて見ようといふ人は格別、吾儕のやうに政事熱に浮かされて、青年時代
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