も悪いのかしら。』と斯う銀之助は自分で自分に言つて見た。やゝしばらく三人は無言の儘で相対して居た。『今日は僕は是で失敬する。』と銀之助が言出した時は、丑松も我に帰つて、『まあ、いゝぢやないか』を繰返したのである。
『いや、復《ま》た来る。』
銀之助は出て行つて了つた。
(四)
『只今《たゞいま》猪子といふ方の御話が出ましたが、』と高柳は巻煙草の灰を落し乍ら言つた。『あの、何ですか、瀬川さんは彼《あ》の方と御懇意でいらつしやるんですか。』
『いゝえ。』と丑松はすこし言淀《いひよど》んで、『別に、懇意でも有ません。』
『では、何か御関係が御有なさるんですか。』
『何も関係は有ません。』
『左様《さやう》ですか――』
『だつて関係の有やうが無いぢやありませんか、懇意でも何でも無い人に。』
『左様《さう》仰れば、まあ、そんなものですけれど。はゝゝゝゝ。彼の方は市村君と御一緒のやうですから、奈何《どう》いふ御縁故か、もし貴方が御存じならば伺つて見たいと思ひまして。』
『知りません、私は。』
『市村といふ弁護士も、あれでなか/\食へない男なんです。彼様《あん》な立派なことを言つ
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