子供心にも父を憐むといふ情合《じやうあひ》は其顔色に表れるのであつた。見れば省吾は足袋も穿《は》いて居なかつた。斯うして酒の罎を提げて悄然《しよんぼり》として居る少年の様子を眺めると、あの無職業な敬之進が奈何して日を送つて居るかも大凡《おほよそ》想像がつく。
『家へ帰つたらねえ、父さんに宜敷《よろしく》言つて下さい。』
と言はれて、省吾は御辞儀一つして、軈《やが》てぷいと駈出して行つて了つた。丑松も雪の中を急いだ。
(五)
宵《よひ》の勤行《おつとめ》も終る頃で、子坊主がかん/\鳴らす鉦《かね》の音を聞き乍ら、丑松は蓮華寺の山門を入つた。上の渡しから是処迄《こゝまで》来るうちに、もう悉皆《すつかり》雪だらけ。羽織の裾も、袖も真白。其と見た奥様は飛んで出て、吾子が旅からでも帰つて来たかのやうに喜んだ。人々も出て迎へた。下女の袈裟治《けさぢ》は塵払《はたき》を取出して、背中に附いた雪を払つて呉れる。庄馬鹿は洗足《すゝぎ》の湯を汲んで持つて来る。疲れて、がつかりして、蔵裏《くり》の上《あが》り框《がまち》に腰掛け乍ら、雪の草鞋《わらぢ》を解《ほど》いた後、温暖《あたゝか
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