ざた》、酢《す》の菎蒻《こんにやく》のとやり出したので、聞く人は皆な笑ひ憎んだ。斯《こ》の坊主に言はせると、選挙は一種の遊戯で、政事家は皆な俳優に過ぎない、吾儕《われ/\》は唯見物して楽めば好いのだと。斯の言葉を聞いて、また人々が笑へば、そこへ弥次馬が飛出す、其尾に随いて贔顧《ひいき》不贔顧《ぶひいき》の論が始まる。『いよ/\市村も侵入《きりこ》んで来るさうだ。』と一人が言へば、『左様《さう》言ふ君こそ御先棒に使役《つか》はれるんぢや無いか。』と攪返《まぜかへ》すものがある。弁護士の名は幾度か繰返された。其を聞く度に、高柳は不快らしい顔付。ふゝむと鼻の先で笑つて、嘲つたやうに口唇を引歪《ひきゆが》めた。
斯《か》ういふ他《ひと》の談話《はなし》の間にも、女は高柳の側に倚添つて、耳を澄まして、夫の機嫌を取り乍ら聞いて居た。見れば、美しい女の数にも入るべき人で、殊《こと》に華麗《はなやか》な新婚の風俗は多くの人の目を引いた。髪は丸髷《まるまげ》に結ひ、てがらは深紅《しんく》を懸け、桜色の肌理《きめ》細やかに肥えあぶらづいて、愛嬌《あいけう》のある口元を笑ふ度に掩ひかくす様は、まだ世帯の苦
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