にして通り抜けた。是《これ》から将来《さき》の自分の生涯は畢竟《つまり》奈何《どう》なる。斯う丑松は自分で自分に尋ねることもあつた。誰が其を知らう。窓から首を出して飯山の空を眺めると、重く深く閉塞《とぢふさが》つた雪雲の色はうたゝ孤独な穢多の子の心を傷《いた》ましめる。残酷なやうな、可懐《なつか》しいやうな、名のつけやうの無い心地《こゝろもち》は丑松の胸の中を掻乱《かきみだ》した。今――学校の連中は奈何《どう》して居るだらう。友達の銀之助は奈何して居るだらう。あの不幸な、老朽な敬之進は奈何して居るだらう。蓮華寺の奥様は。お志保は。と不図、省吾から来た手紙の文句なぞを思出して見ると、逢《あ》ひたいと思ふ其人に復《ま》た逢はれるといふ楽みが無いでもない。丑松はあの寺の古壁を思ひやるごとに、空寂なうちにも血の湧くやうな心地《こゝろもち》に帰るのであつた。
『蓮華寺――蓮華寺。』
 と水に響く櫓の音も同じやうに調子を合せた。
 霙は雪に変つて来た。徒然《つれ/″\》な舟の中は人々の雑談で持切つた。就中《わけても》、高柳と一緒になつた坊主、茶にしたやうな口軽な調子で、柄に無い政事上の取沙汰《とり
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