りて行つた。『何と思つて居るだらう――あの二人は。』斯う考へ乍ら、丑松も亦た人々の後に随《つ》いて、一緒にその崖を下りた。

       (三)

 川舟は風変りな屋形造りで、窓を附け、舷《ふなべり》から下を白く化粧して赤い二本筋を横に表してある。それに、艫寄《ともより》の半分を板戸で仕切つて、荷積みの為に区別がしてあるので、客の座るところは細長い座敷を見るやう。立てば頭が支へる程。人々はいづれも狭苦しい屋形の下に膝を突合せて乗つた。
 やがて水を撃つ棹《さを》の音がした。舟底は砂の上を滑り始めた。今は二挺|櫓《ろ》で漕ぎ離れたのである。丑松は隅の方に両足を投出して、独り寂しさうに巻煙草を燻《ふか》し乍《なが》ら、深い/\思に沈んで居た。河の面に映る光線の反射は割合に窓の外を明くして、降りそゝぐ霙の眺めをおもしろく見せる。舷《ふなべり》に触れて囁《つぶや》くやうに動揺する波の音、是方《こちら》で思つたやうに聞える眠たい櫓のひゞき――あゝ静かな水の上だ。荒寥《くわうれう》とした岸の楊柳《やなぎ》もところ/″\。時としては其冬木の姿を影のやうに見て進み、時としては其枯々な枝の下を潜るやう
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