倉庫のあるところへ出て来た。
『あゝ。』と細君は萎《しを》れ乍ら、『何故《なぜ》私が帰つて下さいなんて言出したか、其訳を未だ貴方に話さないんですから。』
『ホウ、何か訳が有るのかい。』と蓮太郎は聞咎める。
『外《ほか》でも無いんですけれど。』と細君は思出したやうに震へて、『どうもねえ、昨夜の夢見が悪くて――斯う恐しく胸騒ぎがして――一晩中私は眠られませんでしたよ。何だか私は貴方のことが心配でならない。だつて、彼様《あん》な夢を見る筈が無いんですもの。だつて、其夢が普通《たゞ》の夢では無いんですもの。』
『つまらないことを言ふなあ。それで一緒に東京へ帰れと言ふのか。はゝゝゝゝ。』と蓮太郎は快活らしく笑つた。
『左様《さう》貴方のやうに言つたものでも有ませんよ。未来《さき》の事を夢に見るといふ話は克《よ》く有ますよ。どうも私は気に成つて仕様が無い。』
『ちよツ、夢なんぞが宛《あて》に成るものぢや無し――』
『しかし――奇異《きたい》なことが有れば有るものだ。まあ、貴方の死んだ夢を見るなんて。』
『へん、御幣舁《ごへいかつ》ぎめ。』

       (二)

 不思議な問答をするとは思つたが
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